日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: DO-1-1
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低線量・低線量率
低線量放射線による関節炎モデルマウス病態改善とそのメカニズムの解明
*中司 寛子徳永 昌浩月本 光俊小島 周二
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抄録

低線量放射線は生体に有益な作用を示すことが知られている。これまでに当研究室においても全身性エリテマトーデスモデルマウスとして用いられるMRL-lpr/lprマウスにおいて、低線量γ線照射による病態改善・延命効果を報告し、最近そのメカニズムとして制御性T細胞の誘導が関与することを見出した。この制御性T細胞は、自己免疫疾患やアレルギーの病態改善に寄与することが報告されている。そこで本研究では関節リウマチに着目し、コラーゲン誘発関節炎モデル(CIA)における低線量γ線照射の影響を検討した。DBA/1Jマウス(6週齢♂)にウシ_II_型コラーゲンとComplete Freund's Adjuvantの混合エマルジョンを尾部に皮下投与し関節炎を発症させた。また0.5 Gy γ線(137Cs線源、0.88 Gy/min)をコラーゲン感作3日前より週1回照射し、観察を行った。その結果、CIAマウスにおいてγ線照射群では非照射群に比して関節炎スコア、発症率、骨破壊の軽減が認められ、低線量γ線照射による関節炎抑制が示された。次に、このメカニズムを解明するため、CIAマウスの11、13、15週齢において脾臓および血清を採取した。脾臓は、脾細胞精製後、リンパ球構成割合をフローサイトメトリーにより、産生サイトカイン量をELISA法にて測定した。血清からは抗_II_型コラーゲン抗体をELISA法により測定した。その結果、照射群では脾細胞産生サイトカイン(TNF-α、IFN-γ、IL-6、IL-17)および抗_II_型コラーゲン抗体の産生抑制、抗体産生細胞割合の減少、制御性T細胞の割合増加が認められた。以上の結果より、低線量γ線照射によるCIAの病態抑制効果が示され、そのメカニズムとして過剰な免疫反応の抑制および制御性T細胞の増加が関与する可能性が示唆された。

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© 2008 日本放射線影響学会
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