主催: 日本放射線影響学会
共催: 北九州市, 産業医科大学
放射線高感受性メダカric1の胚から樹立した培養細胞株RIC1-e9は、γ線照射によって誘発される細胞死と細胞周期チェックポイントに異常を示す(第49回影響学会発表)。また、コメットアッセイによって、CAB-e3はγ線照射後30分でDSBsを修復したのに対し、RIC1-e9はDSBsを修復するのに2時間を要する(第13回ICRR発表)。本研究では、細胞死と細胞周期チェックポイントの異常がRIC1細胞の特徴であることを確かめるために、新たなRIC1細胞株を樹立した。γ線10 Gy照射後24時間以内において野生型のCAB-e3は30%が細胞死を示したのに対し、新しい細胞株RIC1-e42、RIC1-e44は、数%の細胞しか細胞死を起こさなかった。また、γ線照射後においてCAB-e3は照射後24時間程度まで細胞分裂を再開させなかったのに対し、両RIC1細胞(RIC1-e42、RIC1-e44)ではRIC1-e9と同様に、γ線照射後10数時間以内に細胞分裂が観察された。RIC1細胞株に共通して細胞死、細胞周期チェックポイントの異常が生じた結果は、ric1遺伝子の欠損に起因することを強く示唆する。更に、免疫組織化学的手法によってヒストンH2AXのリン酸化を解析したところ、RIC1-e9はリン酸化したH2AXのフォーカスの蛍光強度がCAB-e3と比較して弱いことが明らかとなった。リン酸化したH2AXのフォーカスの輝度とDNA二本鎖切断の修復速度に関係があるのかを明らかにするために、RIC1-e42、RIC1e-44に加え、RIC1と野性型の新しい細胞株を用いてコメットアッセイとリン酸化H2AXのフォーカスアッセイを行うことを計画している。