日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: BP-16
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放射線応答・シグナル伝達
ヒトリンパ芽球由来細胞における放射線適応応答の分子機構に関する研究
*柿本 彩七田中 薫中島 徹夫王 冰VARES GUILLAUME小島 周二根井 充
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抄録

【目的】放射線適応応答は、予め低線量放射線を照射することで、その後の中・高線量放射線に対する抵抗性を獲得する生体の防御的反応であり、低線量放射線のリスク評価する上で重要な生命現象である。私達は、これまでにHPRT遺伝子座突然変異を指標とした放射線適応応答において、Poly(ADP-ribose)polymerase1依存性が観察されないこと等から染色体異常を指標とした現象とはメカニズムが異なる可能性を示してきた。また、遺伝子発現プロファイル解析により、Ras関連情報伝達因子が放射線適応応答に相関して変動していることを示した。これらの結果に基づき、今回、放射線適応応答に機能する遺伝子の同定を試みた。 【方法】ヒトリンパ芽球由来細胞AHH-1に0.02 GyのX線を照射し、3h, 6h, 9h, 24h後にトータルRNAを採取した。また、非照射の細胞からも同様にトータルRNAを採取し、遺伝子発現プロファイルの解析によって0.02 Gyの放射線に応答することが示された遺伝子のうち放射線適応応答に関連することが予想された遺伝子に関して、Northern blotとreal-time PCRにより遺伝子発現変動を検証した。そして、これらの遺伝子を特異的にノックダウンするために、shRNA発現プラスミドを安定導入した細胞を作製し、HPRT遺伝子座突然変異を指標とした放射線適応応答の有無を解析した。 【結果】遺伝子発現プロファイル解析により、0.02 Gy照射後有意に変動する遺伝子として、DIDO1、MAPK8IP1、SOCS3を同定した。また、Northern blotとreal-time PCRによって、放射線適応応答条件下である0.02 Gy照射6時間後に遺伝子の発現が変動していることを確認した。これらの遺伝子に特異的なshRNA発現プラスミドを安定導入した細胞において、最大68% (DIDO1)、64% (MAPK8IP1)、71% (SOCS3) のノックダウン効率を観察した。これら遺伝子と放射線適応応答との関連性について本大会において議論する。

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© 2008 日本放射線影響学会
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