日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: BP-15
会議情報

放射線応答・シグナル伝達
マウス個体の適応応答における骨髄球系細胞の増殖誘導機構
*大塚 健介小穴 孝夫冨田 雅典緒方 裕光田内 広
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

マウスに顕著な造血傷害をもたらす高線量放射線を照射すると、貧血や免疫不全などの複合要因によって30日以内にほぼすべてが死亡するが、あらかじめ低線量(0.5Gy)を照射したマウスは、30日後の生存率が顕著に高まる場合があることが見出されており、個体の適応応答として知られている。しかしながら、その個体死抑制の機構については免疫機構の活性化が示唆されているものの、造血能の役割については未だ明らかにされていない。我々は高線量のみを照射したマウス(C57BL/6)では顕著に骨髄造血能が低下するが、高線量を照射する2週間前に低線量放射線を事前照射したマウスでは末梢血赤血球および血小板数の回復が早く誘導されることを見出した。また、これらの前駆細胞である骨髄球系前駆細胞(Mac-1+/Gr-1+分画)、さらにこれよりも未分化な細胞集団(c-kit+, Sca-1-, Lin-分画)も、低線量事前照射マウスでより早く増殖誘導が生じることを見出した。これらの増殖を誘導するサイトカイン群をサイトカイン抗体アレイ法およびサスペンションアレイ法を用いて評価したところ、低線量事前照射マウスでは骨髄球系への分化誘導サイトカインおよびインターフェロンの発現増強がより早く誘導されていた。以上の結果より、高線量のみを照射したマウスと比較して低線量放射線を事前照射したマウスでは、骨髄球系サイトカインの発現が造血能の回復を、インターフェロンの発現が免疫能の活性化をより早く誘導するために、30日後の個体の生存率改善をもたらすものと考えられる。

著者関連情報
© 2008 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top