日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: BP-13
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放射線応答・シグナル伝達
DNA二本鎖切断と非二本鎖切断損傷によるヒストンH2AXリン酸化機構の差異
*八木 孝司下原 千昌
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抄録

ヒストンH2AXのリン酸化の機構について、DNA二本鎖切断が生じた部位にMre11/Rad50/Nbs1複合体が結合すると共にATMが活性化し、H2AXをリン酸化するということが明らかになっている。免疫蛍光染色で観察されるリン酸化H2AX(γH2AX)のフォーカス形成は、放射線などによるDNA二本鎖切断の指標として用いられている。しかし近年、直接二本鎖切断を起こすと考えられない化学物質やUVでもγH2AXのフォーカスが形成されることが明らかになってきた。UVでは、損傷のヌクレオチド除去修復機構の過程、および損傷DNAの複製阻害過程でH2AXがリン酸化を受ける。この過程には二本鎖切断の関与はないように思える。  我々は、典型的な損傷を与えることが知られる種々のモデル変異原をヒト細胞に処理して、H2AXのリン酸化を検討した。DNA二本鎖切断を起こすX線やエトポシドなどは細胞周期のS期に限らずH2AXのリン酸化を起こしたが、ヌクレオチド除去修復機構によって修復される、ピリミジンダイマーやベンゾピレン・1,8-ジニトロピレンなどのバルキーアダクトによるH2AXのリン酸化はS期特異的であった。カンプトテシンはDNA一本鎖切断、メチルニトロソウレア・メチルメタンスルホン酸などは塩基のメチル化を起こすが、これらによるH2AXリン酸化もS期特異的であった。またこれらリン酸化はウォルトマニンで阻害された。DNAの複製阻害過程でH2AXがリン酸化されるのは損傷の種類によらない共通の現象であると考えられ、現在その詳細な機構を検討している

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© 2008 日本放射線影響学会
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