日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: BP-5
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放射線応答・シグナル伝達
放射線照射正常ヒト細胞における遅延的酸化ストレスの増加へのミトコンドリアの関与
*小橋川 新子鈴木 啓司山下 俊一
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抄録

 放射線照射が、細胞内の水分子にそのエネルギーを付与することによりOHラジカルなどの短寿命活性酸素種(ROS)を産生することがよく知られているが、これとは別に、放射線照射による細胞内酸化制御機構の撹乱が、遅延的に細胞内酸化レベルを亢進し、様々な遺伝的変化の原因になることが予想されるようになってきた。そこで本研究では、正常ヒト二倍体細胞において、放射線照射後の遅延的ROS産生の有無や、ミトコンドリアの機能不全の関与について検討した。  細胞は正常ヒト二倍体線維芽細胞(BJ-hTERT)を用いた。ガンマ線照射後の細胞内の酸化ストレスの測定にはaminophenyl fluorescein(APF)試薬を用いた。また同時に、MitoSox Redにより、ミトコンドリアに局在するO2-レベルの測定を行った。さらに、ミトコンドリアの形態については、MitoTrackerを用いてミトコンドリアを可視化し、蛍光顕微鏡下で観察することにより検討した。  APFにより酸化ストレスを測定した結果、4 Gy照射直後では未照射細胞の細胞に比べROSレベルは7倍程度まで増加するが、その後すぐに未照射時のレベルにまで戻ることがわかった。しかし、照射2∼3日後から再び酸化ストレスは増加し、照射4日後にそのレベルは最大になった。このとき、2Gy照射細胞では未照射細胞の1.4倍、4Gy照射細胞では2倍、6Gy照射では3倍程度までそのレベルが増加した。また、MitoSox Redを用いた検討から、ミトコンドリアからのO2-の産生量も照射1日後から次第に増加していった。さらに、放射線照射された細胞では、ミトコンドリアに遅延的な形態変化が生じていることも明らかになった。  以上の結果より、ガンマ線照射数日後に遅延性のミトコンドリア機能不全により細胞内酸化度が遅延性に増加しうる可能性が示された。

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© 2008 日本放射線影響学会
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