日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: BP-4
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放射線応答・シグナル伝達
放射線の環境影響研究の進展:放医研の取り組み
*吉田 聡石井 伸昌石川 裕二川口 勇生久保田 善久武田 洋中森 泰三坂内 忠明藤森 亮府馬 正一丸山 耕一保田 隆子柳沢 啓渡辺 嘉人
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抄録

国際放射線防護委員会(ICRP)の新勧告(2007)に環境の放射線防護に関する新しい章が追加され、この件に関する国内の議論も少しずつ始まっている。放射線医学総合研究所(放医研)では、人以外の生物および生態系に対する放射線の影響に関する研究をいち早く開始して基礎データを積み重ねつつある。本報告では最近の研究の進展についてまとめて紹介する。
まず、数種類の生物(藻類、メダカ、ミジンコ、ミミズ、トビムシ、菌類、針葉樹等)を選定して、線量評価および影響評価に関する研究を開始した。線量評価については、放射性核種や関連元素の生物への移行と体内分布を把握するための研究を行っている。影響評価については、X線やγ線の急性照射に対する線量-効果関係を、致死、細胞死、成長阻害、繁殖阻害等のエンドポイントを使って明らかにする研究を開始し、データが蓄積しつつある。より低線量率の連続照射についても、新しい照射施設を整備して実験を開始した。また、放射線の影響を網羅的遺伝子発現解析手法(HiCEP)等によって分子遺伝子レベルで明らかにするための研究も実施し、放射線応答遺伝子の検出とその同定作業が進んだ。
一方、生態系への影響については、既知の生物で構成されるモデル生態系の利用と、実生態系の群集構造の変化を直接検出することの両者で研究を進めている。モデル生態系は3種の微生物が共存する水圏モデル生態系から研究を開始し、現在は、より多くの微生物で構成されるモデル生態系を用いて、生物の個体数が有害因子の負荷によって変化する程度を定量化することに成功している。また、土壌細菌群集の種組成の変化を変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)によって捉える研究を進めている。

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© 2008 日本放射線影響学会
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