日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W7R-376
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植物のDNA修復系からみた放射線生物影響
色素性乾皮症A群細胞におけるPCNAの紫外線DNA損傷部位への遅延型集積の意味
*森 俊雄勝見 祥子小林 信彦宮川 幸子浅田 秀夫
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抄録

色素性乾皮症 (XP) はヌクレオチド除去修復 (NER) 機構に異常をもつ遺伝疾患であり、太陽露光部における皮膚がんや進行性の神経障害などを発症するが、根本的な治療法は確立されていない。それ故、XP細胞におけるNER異常の多面的解析が治療法のヒントを得るために重要である。本研究では、正常ヒトあるいはXP-A 細胞を用いて、膜フィルターを利用した局所紫外線照射直後および各時間修復後にシクロブタン型ダイマー (CPD) 、(6-4)型ダイマー (6-4PP)、あるいはNER蛋白であるPCNAを蛍光免疫染色し、修復過程でのDNA損傷と修復蛋白の相互作用を解析した。その結果、照射直後の両細胞において、CPDと6-4PPは細胞核あたり数個の小円状に蛍光染色された。正常細胞は、全ての6-4PPを3時間以内に、また、CPDの約半分を24時間で修復除去した。界面活性剤不溶性 (クロマチン結合型) PCNAは、照射30分後には損傷と重なる小円状に染色され、その染色度は両損傷の修復活性を反映しながら減少した。一方、XP-A細胞は24時間以内に両損傷を全く修復できなかった。これを反映して、PCNAは照射後3時間まではほとんど染色が見られなかったが、驚くべきことに、照射後9時間以降は損傷と重なる小円状に染色された。このPCNAの遅延型集積の機構について検討した結果、ダイマー型以外のDNA損傷の塩基除去修復、アポトーシスに関連したDNA切断の修復、あるいは損傷部位で停滞したDNA複製では説明できないことがわかった。そこで、光回復酵素を用いてCPDと6-4PPの両方を消去したところ遅延型PCNAも消えたことから、ダイマー型損傷に関連していることが明らかとなった。  以上の結果は、XPA欠損のためにDNA損傷が長時間修復されないまま残存すると、NERの終盤でギャップの修復 DNA合成に働くPCNAまでもが次第に損傷部位に集積し、結合し続けることを示している。

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© 2007 日本放射線影響学会
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