放射線で生じるDNA損傷のうちでもっとも重篤なのはDNA二重鎖切断(DSB)とされる。その修復機構については、少なくとも相同組換え(HR)および非相同末端結合(NHEJ)の2つがあることが知られているが、ここ5年あまりの間にDSBに応答するシグナル機構と修復に関わる新たなタンパク質やそれらの機能が急速に明らかとなってきている。DNA損傷応答シグナルに関連するタンパク質は、DSBの生成を関知するセンサーとそれを増幅・伝達するメディエーターやトランスデューサー、そして生体応答を引き起こすエフェクターに分類されているが、実際は、1つのタンパク質が複数の機能を有するなど、放射線DNA損傷に応答する修復シグナルは当初予想されていたよりもはるかに複雑なコントロールを受けていることがわかってきた。本ワークショップではセンサー、メディエーターからエフェクターに至るまでのDNA損傷応答に関する最新知見を集め、それらをもとにした議論を通じてより深く理解することを目指したい。その導入として、損傷応答シグナルの概要をまとめ、本ワークショップで取り扱う知見とそれらの関連についての情報提供を行いたい。