日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W2R-328
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環境変異原によるDNA二重鎖切断は細胞死の過程か防御機構か
NBS1のアルキル化剤によるDNA損傷修復における役割
*岡本 優紀藤本 浩子小林 純也松浦 伸也小松 賢志
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抄録

DNA二重鎖切断(DSB)の修復には、非相同末端結合と相同組換え(Homologous Recombination:HR)の2つの経路がある。ナイミーヘン症候群(NBS)は放射線感受性やゲノム不安定性などの細胞表現型を示す遺伝病であるが、その原因遺伝子NBS1はDSBのHR修復に必須の因子であることが報告されている。またNBS1はMre11, Rad50と複合体(MRN複合体)を形成し、この複合体はDNA損傷の発見とシグナル伝達、そして修復に関わっている。一方、MRN複合体のパラログである Deinococcus radioduransSbcC/SbcD/Xrs2複合体もまた、DNA修復に広く関わっており、アルキル化剤感受性であることが知られている。この事はNBS細胞もアルキル化剤感受性であることを示唆している。
 今回、私はDNAアルキル化剤によるDNAダメージ応答にNBS1が機能するかを明らかにするために、マウスのNBS1ノックアウト細胞とこれにNBS1遺伝子を導入した相補細胞を用いて検討した。その結果DNAアルキル化剤methylmethanesulfonate(MMS)処理した細胞でDSB損傷認識タンパク質とされるリン酸化ヒストンH2AX(γH2AX)とNBS1がフォーカスを形成した。また上記と一致してコロニーアッセイでNBS細胞のMMS高感受性を確認した。これらの結果からNBS1はDNAアルキル化剤MMSによって生じるDNA損傷応答に機能していることが示唆された。現在この機構について解析を行っている。

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© 2007 日本放射線影響学会
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