日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: DP-131
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DNA損傷の認識と修復機構
X線と重粒子線照射後のDNA DSBに対する NHEJ修復-ATM依存的経路か非依存的経路かの検討-
*関根 絵美子于 冬二宮 康晴藤森 亮安西 和紀岡安 隆一
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抄録

〔目的〕ATMは修復の前駆者とされ、シグナル伝達を通して他のタンパク(Mre11,NBS1,53BP1,p53など)を誘導することで放射線感受性を支配している。AT(ATM-/-)の患者は修復異常が起こり、放射線高感受性などの激しい表現系が発生する。我々はATMと、代表的な修復タンパクであるDNA-PKcsとの放射線照射、特に重粒子線照射後の働きと相互作用について検討した。 〔方法〕DNA-PKcs (pTh2609,pSer2056) 、ATM (pSer1981)などを用いた免疫蛍光法によりNHEJに関与したDSB修復の効率を検出した。ヒト正常細胞(HFLIII, MRC5VA)、ATホモ(ATM-/-)細胞(AT2KY, AT5BIVA, AT3BIVA)を使用した。ATM特異的阻害KU55933は放射線照射1時間前に10μM添加した。放射線源はX線と重粒子線(炭素:70KeV/μm、鉄:200keV/μm)を用いた。 〔結果と考察〕AT細胞は正常細胞と比較し重粒子線照射においても、有意に放射線感受性を示した。正常細胞では、重粒子線照射後でも、ピークは遅れるが確実にDNA-PKcsのリン酸化は検出された。しかし、AT細胞ではX線照射時に観察されたDNA-PKcsのリン酸化が、重粒子線照射時には顕著に減少した。このことより、X線照射後のNHEJ修復は、DNA-PKcsのリン酸化が主にATM非依存的であり、重粒子線照射後では、殆どがATM依存的であることが示唆された。今回の結果により、重粒子線により生成される複雑な傷は、ATMに依存して修復されると考えられる。 現在はDSB修復に関与するタンパク、そのリン酸化の発現変化を解析中である。また、NHEJ の減少により、HRR 経路が活性化する可能性も考えられ、Rad51の免疫蛍光法などにより、その可能性を検討している。

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© 2007 日本放射線影響学会
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