日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: CP-106
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放射線応答とシグナル伝達
炭素線とX線を照射したがん細胞における遺伝子発現プロファイルの差異
*松本 孔貴岩川 真由美石川 顕一今井 高志辻井 博彦安藤 興一古澤 佳也
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抄録

【目的】炭素線またはX線照射後のヒト悪性黒色腫由来細胞における細胞死,遺伝子発現および細胞周期の変化を調べることで,分子メカニズムの差異を明らかとする。【方法】ヒト悪性黒色腫由来細胞6種(C32TG, Colo679, HMV-I, HMV-II, 92-1, and MeWo)を用い,炭素線またはX線2Gy照射1,3時間後の網羅的な遺伝子発現変化をDNAマイクロアレイ(GE Healthcare, 55000プローブ)により検出し,Resolver software(Rosetta)を用いて遺伝子発現解析を行った。【結果】22遺伝子が6細胞全てで,173遺伝子が4細胞で炭素線に応答を示した(ANOVA, P < 0.001)。発現が抑制された遺伝子の中に,X線に比べ炭素線により強く応答した遺伝子を多数見出すことができ,この中には細胞周期,細胞増殖に関与する遺伝子(CCNA2, CDCA8, CENPA, CRK7, ID1, KNTC2, TTK, and WEE1)が含まれていた。一方で,照射後発現誘導した遺伝子の多くは,炭素線だけでなくX線に対しても類似した応答を示し,その中にはp53標的遺伝子(ATF3, BTG2, CDKN1A, GADD45A, SESN1, TNFRSF6, and TP53INP1など)が多数含まれていた。さらに,照射後30時間において,炭素線はX線に比べ顕著にG2/Mアレストを誘導した(P < 0.05)。【結論】今回の結果から,炭素線応答において遺伝子の発現抑制が重要な役割を持つことが示唆された。また,細胞周期関連遺伝子の調節とG2/Mアレストの誘導が炭素線に対する感受性に関与する可能性が示唆された。会場では,G2/Mアレストの線量依存性についても報告する。

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© 2007 日本放射線影響学会
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