日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: CO-025
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放射線応答とシグナル伝達
重粒子線によるEGF受容体を介したERKの活性化
*細井 義夫榎本 敦笹野 仲史加藤 宝光関根 絵美子藤井 義大岡安 隆一宮川 清
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抄録

目的: 上皮増殖因子受容体(EGFR)は放射線により活性化し、それによりERKが活性化することが報告されている。放射線によるEGFRの活性化が放射線抵抗性化の原因の一つと考えられるが、その機序は明らかではなかった。我々はX線によるEGFRの活性化がSrcを介したtransactivationによることを明らかにした。本研究では、X線で認められたEGFRのtransactivationが炭素線でも認められるかどうかを明らかにするために実験を行った。方法: 重粒子線照射は、290MeV/uの炭素線を用いて放射線医学総合研究所で行った。MDA-MB-468細胞を用い、照射後2分~6時間培養し、SDSサンプルバッファーで処理してウエスタンブロットを行った。結果: 炭素線2Gy照射の2-5分後と4-6時間後にERK1/2の活性化が観察された。また、0.001-20 Gyの線量でほぼ同程度のERK1/2の活性化が認められたが、0.0005Gy以下の線量ではERK1/2の活性化は認められなかった。リガンドによりEGFRが活性化する場合にリン酸化されるTyr845、Tyr992、Tyr1045、Tyr1068では、照射によるリン酸化の変化は認められなかった。Srcの活性化が認められたが、SHP-2の活性化は認められなかった。EGFRに対する特異的阻害剤AG1478によりERK1/2の活性化は阻害された。結論: 今回の実験結果から、炭素線照射によりEGFRのtransactivationによりERK1/2の活性化が起こることが示唆された。また、0.001Gyという極めて低い線量の炭素線でも活性化することが明らかとなった。時間依存性とEGFRを介する点から、活性化の機序はX線と基本的に同じと考えられた。

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© 2007 日本放射線影響学会
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