日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: BP-233
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突然変異と発癌の機構
思春期前後での放射線およびMNU曝露により発生したラット乳がんのホルモン受容体発現
*波多野 由希子今岡 達彦西村 まゆみ飯塚 大輔島田 義也
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抄録

成人に比べ小児は放射線や化学物質に対する発がん感受性が高いことが知られている。成人の乳腺細胞はホルモン依存的に増殖し、またほとんどの乳がんはホルモン受容体陽性を示す。それに対し、卵巣や下垂体からの性ホルモンが有効に働いていない思春期前には、乳腺細胞はホルモン非依存的に増殖しているが、思春期前の発がん剤処理により発生した乳がんのホルモン受容体発現は調べられていない。そこで本研究では、エストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PgR)に着目し、思春期前後(3および7週齢)のラットに発癌処理を行い、乳がんの発生頻度およびホルモン受容体発現について検討した。  3週および7週齢のSDラットに、メチルニトロソ尿素(MNU)を20mg/kgを腹腔内投与、あるいはγ線2Gy全身照射を行い、50週で解剖した。摘出した乳腺腫瘍はHE染色標本を作製し、良性腫瘍と悪性腫瘍の診断を行った。悪性腫瘍と診断されたものについてはERおよびPgRを免疫組織化学的染色した後、1000~2000個の細胞をカウントし、陽性率を算出した。 MNUによる乳がん発症率を比較すると、3週齢で39%、7週齢で17%と3週齢で有意に高率な発症が見られるのに対し、放射線では3週齢で28%、7週齢で55%とMNUとは逆に7週齢で高率な発症率を示した。一方ERおよびPgRの発現をみると、7週齢曝露群ではMNUおよび放射線共に69~100%がホルモン受容体陽性を示したのに対し、3週齢曝露群ではMNUで64~73%がホルモン受容体陽性を示したが、放射線での陽性率は25~38%と低かった。これらの結果から思春期前の放射線被ばくによる乳がんは思春期後の被ばくによる発がんメカニズムとは異なること、また受容体陰性のヒト乳がん一般と同様に予後不良である可能性が示唆された。

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© 2007 日本放射線影響学会
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