日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: WS10-3
会議情報

国際宇宙ステーション"JEM"搭載実験実現に向けて
ISS利用実験計画:宇宙環境の変異誘発に及ぼす影響の推測
*谷田貝 文夫梅林 志浩本間 正充阿部 知子鈴木 ひろみ嶋津  徹石岡 憲昭岩木 正哉
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

ふつう、宇宙環境は微小重力に象徴されている。低線量かつ低線量率の宇宙放射線による被ばくの影響も見逃してはならないと思われる。これらの問題は、単に宇宙飛行士への健康影響といった観点からだけではなく、も少し将来を見据えた宇宙環境利用といった大きな視野からも検討が必要な問題であろう。重力影響と放射線の影響を切り離して評価する系の樹立が望ましく、これらの相乗効果の存在までも評価できるともっとよい。実際に、スペースシャトルなどを利用した宇宙フライト実験によって、相乗効果を検討する先駆的な研究がすでになされているが、種々の系で様々な結論が出されている。ISSを利用した宇宙実験を行うことによって、単に生物試料を長期間宇宙に滞在させることだけで、宇宙環境を反映した、より信頼のおけるデータが得られるとは限らない。すなわち、分子、細胞、個体、いずれのレベルでもよいが、適切な実験系を構築する必要がある。
ここでは、遺伝的影響の中でも、染色体レベルでの変異誘発効果に的を絞り、ヒト培養細胞を利用して放射線の影響を高感度に検出するとともに、低重力による影響も併せて検出することを目指して進めている、ISS実験計画を紹介する。ヒトリンパ芽球TK6細胞で確立したLOH(Loss of Heterozygosity:ヘテロ接合性の喪失)解析システムを利用すると、通常の培養液中の浮遊状態での10cGyといった低線量のX線や炭素イオン(135MeV/u)照射による変異誘発効果を検出できることはすでに報告してきた。凍結した細胞に炭素イオン10cGy照射をした場合でも,浮遊状態より少し感度は低下するが、放射線照射を反映するLOH (Interstitial Deletion)を検出できた。これら,宇宙実験に期待をもたせる実験結果に加えて、実際に宇宙実験を行う為の準備実験の進行状況を報告する。

著者関連情報
© 2006 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top