日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: P2-16
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放射線影響(染色体異常・発がん・遺伝的不安定性)
レトロトランスポゾンIAPの逆転写測定技術の確立
*田中 泉田中 美香石渡 明子松島 裕美子近森 穣鈴木 桂子石原 弘
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抄録

 レトロトランスポゾンIntracisternal A-particle (IAP) DNA element は二つのLTRに挟まれたgag-pol遺伝子を所持するユニットであり、反復配列として正常マウスゲノムに数千コピー含まれている。これに由来するRNAは多くの正常細胞に含まれており、レトロトランスポジション機構により逆転写されてゲノムに組み込まれ、周囲の遺伝子に影響を及ぼす潜在性の内在変異原である。これまで我々はC3H/Heマウスにおける放射線誘発骨髄性白血病細胞においてIAP媒介性のゲノム異常の頻発することを報告してきた。しかし、細胞内には多量のIAP類似核酸が存在し、ゲノム異常に関連する挙動を解析することは困難であった。我々はゲノム異常の直接の要因であるIAP逆転写物を測定するために、特殊デザインした逆転写レポーター遺伝子を構築して細胞に安定導入し、逆転写物の正確な定量技術を開発した。
 逆転写測定用レポーター遺伝子に由来するRNAからのレトロトランスポジションにより逆転写物に生ずる特異配列を標的としたPCRにより逆転写を証明すると同時に、半定量PCR条件を確立した。さらに、導入遺伝子に特徴的な配列とゲノム標準配列を分子内に持つリファレンスプラスミドを使用した内部標準法に基づくreal-time PCRにより、細胞あたりのcDNA量を正確に測定する技術を確立した。この技術を使用して、細胞内の逆転写レポーターIAP遺伝子のcopy数、これに由来するRNA量、cDNA量を測定することが可能になった。

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© 2006 日本放射線影響学会
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