九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 158
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股関節内転筋群へのアプローチが立ち上がりに及ぼす影響
*田中 宏樹後藤 由美隈川 公昭
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抄録

【はじめに】
 日常的に頻繁に繰り返される動作に立ち上がりがある。立ち上がりは大腿四頭筋との関連について多く報告されているが、股関節内転筋群との関連についての報告は少ない。本研究は、股関節内転筋群へのアプローチが立ち上がりに及ぼす影響について検討することを目的とした。
【対象】
 下肢に整形外科的疾患を有する65歳以上の高齢者で立ち上がりが自立し、本研究の趣旨を説明し同意の得られた10名を対象とした。この10名を無作為に股関節内転筋群へアプローチを行う介入群と従来の運動療法のみを施行した対照群に分けて検討した。
【方法】
 股関節内転筋力はMMT、立ち上がり能力は、10秒間の立ち上がり回数を測定した。片脚立位保持時間は開眼で最大1分間測定し、下肢荷重力は片側足底に体重計を置き、最大努力で体重計を押してもらい測定した。股関節内転筋群のアプローチは、立位姿勢にて足底にタオルを敷き片側ずつ可能な範囲で股関節内・外転運動を繰り返す。また臥位で膝関節を90°、0°屈曲させた肢位で5秒間ボールを挟む等尺性収縮を10回行う。このアプローチを1週間行い1週間後に再度同様の項目を測定し、MMTを除く各測定項目の改善率を群間で比較・検討した。
【結果】
 股関節内転筋力は、介入群では改善は認められず、対照群で2名のみ患肢がMMT3→4への改善が認められた。立ち上がり回数の改善率は、介入群68.3±77.8%、対照群16.7±23.6%。片脚立位時間は介入群42.6±56.3%、対照群19.0±29.9%。下肢荷重力は介入群10.8±13.3%、対照群0.40±4.81%であり、介入群が対照群よりも大きな改善率を示した。
【考察】
 介入群では股関節内転筋力の変化は認められないものの、対照群よりも立ち上がり回数や下肢荷重力、片脚立位保持時間の向上が認められた。下肢荷重力は大腿四頭筋筋力や前方への重心移動量と関連しており、片脚立位についても大腿四頭筋との関連性が報告されている。したがって、股関節内転筋群へアプローチを行うことで、大腿四頭筋の補助的な活動の増加や、立ち上がり時の骨盤前傾による前方への重心移動量の増加が起こったと考えられる。これにより、立ち上がり能力が向上したものと推察される。

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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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