九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第28回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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主体的に参加できるOTを実施して
その人がその人らしいとは・・・
*芝 圭一郎四本 伸成青木 京子玉島 亜希子長倉 弓子濱田 素美濱尾 玲早藤元 登四郎
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p. 102

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抄録

【はじめに】
 『主体的』というのは「自分の考えや判断によって行動する様子」のことである。その人がその人らしく生きる為には主体的に行動できることが前提であるといえる。作業療法(以下OT)の定義でも「主体的な生活の獲得を図る」ことが目的として挙げられている。このことを踏まえ、精神科に入院している対象者の状況を考えた場合、「主体的行動」をとることに多くの制限がある環境といえる。今回、土曜日の午前中に入院者を対象とした作業療法(以下土曜OT)を開始するにあたり、主体的な参加を目指し、自主活動の形式を考案し行った。
【目的】
 土曜OTに対しての意識調査
【対象】
 当院開放・閉鎖病棟でOT処方をうけており、土曜OTに参加したことのある37名(男性23名/女性14名)。平均年齢男性51.9歳(±12.6歳)、女性54.6歳(±11.2歳)
【方法】
 月曜から金曜までのOT(以下平日OT)と土曜OTの違いを評価する為、土曜OTに対する意識調査アンケートを実施した。アンケート内容は1.土曜OTがあったほうがよいかなくてもよいか、2.その理由の2項目である。平日OTと土曜OTの違いを以下に述べる。平日OTは、全OT処方者が参加者であり、活動前に病棟にて声掛け誘導を行っている。OT室への移動後、スタッフが点呼をし、活動開始となる。活動内容は手工芸、運動等プログラムに沿ったものである。土曜OTでは、参加者は開放病棟及び院内散歩許可者と決まっており、活動前の誘導は行っていない。前日までに参加の意志を伝えておくのみとなっている。OT室への移動後、名簿に自らチェックをし、活動開始となる。活動内容は自主活動で、既存のプログラムはない。施錠もしていない。
【結果】
 「1.土曜OTがあったほうがよいかなくてもよいか」について、あったほうがよい32名(86%)、なくてもよい5名(14%)の結果が得られた。「2.その理由」について、あったほうがよいと答えた32名より51件の意見が挙がり、それらは『時間』、『作業スキル』、『人数』の三つの理由要素に分けられた。『時間(暇だから、何もないと時間が長く感じるから、時間つぶしになる、行きたいとき行ける等)』が47%、『作業スキル(作品をつくれるから、作業が進む、仕事だから、ミシンが使える等)』が40%、『人数(雰囲気が落ち着いている、人数が少ないから等)』が13%であった。なくてもよいと答えた5名より12件の意見(週末はやすみたい、ゆっくりしたい、忙しい等)が挙がった。
【考察】
 アンケート結果より、土曜OTは、趣味や作業を行うことで技術の向上が図れ、他者からの賞賛を通じて自己承認ができる機会となっていると考えられる。また、パーソナルスペースの確保により安心、安全の保証ができていると考えられる。このように肯定的要素のあるOTを余暇利用方法の選択肢の1つとして提供することができた。その結果、時間を有効に活用したいという向上心が引き出せ、自己決定や判断をもとに自主的参加が得られていると考えられる。このことは主体的行動となっているといえ、主体的行動がその人らしいといえる一つの要素であるならば、どのような理由があれ主体的行動に制限の多い精神科の対象者にとって、主体的行動となる環境は必要であるといえるのではないだろうか。

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© 2006 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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