九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第26回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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糖尿病治療への新たな取り組み
運動療法ビデオと個別処方箋の作成
*柳武 隆博
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p. 51

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抄録

【はじめに】
 当院では、平成14年12月に新棟1Fに糖尿病センターが開設され、積極的に糖尿病治療の向上を行っている。そこで、理学療法室での新たな取り組みとして、糖尿病運動療法ビデオ「ストレッチ編とレジスタンストレーニング&ウォーキング編」の2種類の作成と個別運動療法処方箋の作成を行った。
【目的】
 現在、当院で行われている糖尿病教育入院(クリニカルパス)の理学療法室の役割として個別指導と集団指導がある。この指導においてビデオを用いる事で、実践に即した効率の良い運動の指導を行うと共に、希望に応じて患者への貸し出しを行い、家庭での運動習慣の意識付けを行うよう考えた。
 次に、個別運動療法処方箋の作成を行った目的として、糖尿病教育入院患者に対する個別指導の現状としては、入院中のみの指導に留っている状況である。そこで、退院後のフォローアップの方法として、外来診療の際に医師が運動指導を継続して行った方が良いと考えられる患者に対して、個別運動療法処方箋を処方し運動指導を行っていく事を考えた。
【ビデオの内容】
・ストレッチ編(第1巻)
・レジスタンストレーニング&ウォーキング編(第2巻)
【ビデオの利点】
・運動療法の目的や効果の説明が、分かりやすく説明されているので初めての方でも理解しやすく、家庭でもすぐ出来る
・集団指導でビデオを見るので、患者同士でディスカッションしながら見る事が出来ると共にその場で理学療法士のアドバイスを受ける事が出来る
【運動療法ビデオの現在の問題点と対策】
 問題点:貸し出し場所が理学療法室のみなので、患者が理学療法室まで足を運ばなければならない
 対 策:リハ室以外の場所での貸し出し
 問題点:糖尿病センターの利用者しかビデオを知らない
 対 策:ポスターなどを作成し院内で配布
 【個別指導処方箋の内容】
 患者基本情報、合併症・薬物療法・食事療法の状況、検査データ、注意禁忌事項、運動療法(目標Kcal・血圧、脈の上限)、生活リズムの確認、日常生活指導内容、運動療法指導内容
【個別指導処方箋の利点】
・生活スタイルに応じた必要なカロリーと現在摂取している必要以上のカロリーを自分で計算し、自分で目標を立てるので能動的で効率の良い運動療法が行える。
・理学療法士のアドバイスを聞きながら自分で運動の種類や量、頻度を決定できる
【個別指導処方箋の現在の問題点と対策】
 問題点: 処方箋のルートが明確化されていない
 対 策:外来診察からリハビリまでの処方箋のルートを作成し、関係スタッフに説明を行い指導箋の定着化を図る
 問題点:指導内容が統一化できていない
 対 策:理学療法スタッフに対しての指導用資料を作成し指導内容の統一化を図る
【考察】
 今回作成した糖尿病の運動療法ビデオを利用することで、家庭での運動療法の継続を行い血糖値のコントロールの自己管理を意識してもらうことを行っているが、現在のところ、ビデオの貸し出し依頼が少ない状況である。原因として、糖尿病センターを利用している方にしかビデオの存在が知られていない事と、ビデオの貸し出し場所が理学療法室のみであり、ビデオを借りるために旧棟2Fにある理学療法室まで足を運ばなければならない事が大きな原因と考えられる。これらの問題点への対策として、ビデオを紹介するポスターを作製し、当院の外来待合室や掲示板、医療情報プラザなどに掲示する事でビデオの紹介を行う共に、貸し出し場所の増設を検討していきたいと考える。
 また、現在の個別指導処方箋に関しては、処方ルートが明確化されていないため、医師からの処方は行われていない。これに対しては、外来診察からリハビリまでの処方箋のルートを作成し、関係スタッフに説明を行い指導箋の定着化を早急に図っていくと共に、個別指導処方箋の指導方法マニュアルを作成し、理学療法スタッフの指導の統一化を行い、質の高い指導を行っていきたいと考える。
 今後、糖尿病センター待合室や医療情報プラザでの上映や地域医療連携病院への貸し出しを行うことで糖尿病ビデオの普及を進めると共に、個別指導処方箋を利用し患者自身が継続していける内容の運動方法を決め、無理のない範囲での運動の継続を行っていただく事で、糖尿病3大合併症の予防を行っていきたいと考える。

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© 2004 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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