溶液中で反応が起こる際に、反応基質の化学変化と溶媒和-脱溶媒和の現象がどのようなタイミングで起こるのかという問題は、電子移動反応に限らず一般の有機反応においても重要な問題である。このような問題に対する計算化学的アプローチの第一歩として、アシロインアニオンの分子内ヒドリド移動反応を取り上げ、量子化学的計算を行った。RC(=O)CH(-O)R'アニオン、および水数分子で溶媒和したクラスターモデルについて、1,2ヒドリド移動の反応経路を求めたところ、10 kcal/mol程度の低い活性化エネルギーで反応が進行することが分かった。発表では反応経路に対するR、R'の効果、ならびに反応に伴う溶媒和構造の変化について議論する。