近年,携帯電話の普及に伴い,自動車運転時においての携帯電話利用を原因とした交通事故が増加しているとの報告がある。これは携帯電話の使用により,ドライバーの運転への注意が阻害されているためと考えられる。一方,運転時においてドライバーが注意を配分できる視覚範囲を測定し,それが聴覚情報によって及ぼされる影響について定量的に検討することは安全性の面からも極めて重要と言える。そこで本研究では,聴覚情報における負荷が,認知的処理レベルが異なると考えられる視覚情報にどのような影響を及ぼすか,その基礎的データを提供することを目的とした。結果より,聴覚情報の負荷が増大するに従い,視角探索反応時間も増大することが示された。また視覚探索をより複雑にすることによっても反応時間が増大することが示された。よって携帯電話の使用が自動車運転に悪影響を及ぼすことが明らかとなった。