砂防学会誌
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崩壊面積の予測に関する基礎的研究(II)
ガンマー分布モデルとシミュレーションによる崩壊発生率の時系列について
大村 寛
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1981 年 33 巻 3 号 p. 8-17

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抄録

豪雨による崩壊について,地域全体の平均的な崩壊発生時刻を予測するために,崩壊発生率の時系列が次のガンマー分布モデルで検証された。
ηt=F(C,rt)-F(C,rt-1)/F(C,rτ),F(C,rτ)=1-e-1j=0(λrτ)j/j!e-λrτ
ηt:崩壊発生率,降雨開始後t-1から1時間以内に崩壊した比率
C:地域で固有の抵抗示数
rt:降雨開始t時間までの総降雨量
F(C,rτ):抵抗示数C,総降雨量rτの単位斜面が崩壊する確率,流域の崩壊面積率
τ:降雨継続時間
λ:ショックの発生率(mm-1)
j:単位斜面に蓄積されたショック数
また,複雑な条件下での解析を進めるために,ガンマー分布モデルにしたがって,ショックの発生と蓄積過程に関するモンテカルロ・シミュレーションが電子計算機で行なわれた。
すなわち,時間雨量λΔrtによってショックの発生確率λΔrtが与えられ,この確率のもとに1,000個の単位斜面に対してショックの生起する斜面が一様乱数でランダムに指定される。ここで抵抗示数C以上にショックの蓄積された斜面が崩壊斜面とみなされる。
以上の計算ないしシミュレーションにおいて,抵抗示数を小さくすれば崩壊発生率は降雨パターンに影響されやすく,抵抗示数を大きくすれば蓄積効果がはたらいて,後で集団的に崩壊する。
実際に藤岡,南伊豆,久能地区などで崩壊時刻に関する聞き込み調査を行なって,以上の計算やシミュレーションの結果と比較した。その作業で抵抗示数を適切に選べば,計算結果等は実測値の動向にある程度,接近し得ることがわかった。

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