昭和20年代の生活改善普及事業について,農林省の方針とそれに対する岩手県の対応を中心に考察した.当事業の目的の1つは農家生活の改善にあった.もう1つが農村の民主化に寄与することであった.同省は普及事業の主務課として農業改良課の設置を自治体に求めた.また女性主体の自主的な生活改善グループを担い手とすることを求めた.しかし岩手県は農林省の方針に反して農業改良課を設置せず,また有力な農民リーダーのいるムラを生活改善指定部落として,男性主導で生活改善を進めるという方針をとった.波及効果を考え,目に見える台所改善を優先的に進めた.