応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
研究紹介
酵素駆動の皮膚通電デバイス
西澤 松彦
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2017 年 86 巻 4 号 p. 315-319

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抄録

酵素を電極触媒に用いるバイオ電池は,糖やアルコールなど安全で豊富な化学エネルギーから直接発電する電源であり,有機材料のみで構成できる優れた生体・環境調和性が永く興味を集めてきた.そして近年,電極のナノ構造制御による出力向上を契機に,実用化に向けた研究開発が加速している.本稿では,カーボンナノチューブ(CNT)と酵素の精密複合化による高活性な伸縮性酵素電極の作製と,皮膚通電デバイスへの応用を紹介する.皮膚内への通電は,イオントフォレシスによって経皮薬物浸透を促進する.皮膚表面への通電は,表皮細胞の電気走性を刺激し,創傷治癒を促進する.これらの通電効果を酵素反応によるバイオ発電で引き起こし,有機物のみで構成された安全・安価な使い捨てデバイスの実現を目指している.

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© 2017 公益社団法人応用物理学会
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