2013 年 82 巻 5 号 p. 397-402
薄膜・界面の熱物性は,現代の電子機器や情報機器に用いられるデバイスの発熱や内部の温度を適切に制御するために重要である.薄膜において特徴的な,微細な結晶粒,結晶欠陥,また成膜プロセスに起因する気体分子の混入などは熱伝導のキャリヤであるフォノンや自由電子を散乱する要因となるため,薄膜の熱物性値は物質本来の値とは異なることが多い.またナノスケールの多層構造では,異種物質の接触面において生じる熱抵抗(界面熱抵抗)も無視できない影響を及ぼすことがある.本稿では,金属薄膜の膜厚方向の熱拡散率を定量的に測定できるパルス光加熱サーモリフレクタンス法の概要を紹介し,薄膜の熱拡散率の計測例や界面熱抵抗の評価について紹介する.