ミルクサイエンス
Online ISSN : 2188-0700
Print ISSN : 1343-0289
ISSN-L : 1343-0289
原著論文
カマイルカにおける泌乳期の乳成分推移
勝俣 浩信時 優子 勝俣 悦子浦島 匡福田 健二
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 71 巻 3 号 p. 92-102

詳細
抄録

 本研究では飼育下で分娩した太平洋カマイルカの母乳を搾乳し,乳成分分析を分娩後約3か月間,熱量及び色調変化を5カ月間調査した。

 乳成分変動は,脂質9~32.5%,蛋白質9.9~13.3%,糖分1.1~2.1%,灰分0.33~0.84%の範囲であり,高乳脂質,低糖質な乳であった。乳脂質は分娩後0日と1日で大きく変動し,蛋白質と糖質は変動が見られなかった。母乳熱量は2.3~3.5 kcal/gであり,泌乳期が進むにつれ増加した。乳熱量は飼育下のバンドウイルカより高い傾向にあり,この違いは生息域や生活様式が関与している可能性が考えられた。子の成長は出生時体長105 cm,体重12.9 kgであり,出生後15週で,129 cm,27.8 kgに直線的に増加した。

 母乳の色調は,約2週目ごろより緑白色に変化した。この現象は他の鯨類においてもいくつか報告されており,鯨類の特徴の一つである可能性が示唆された。

 本研究で得られた情報は1個体に基づくもので,今後他個体によるデータも集める必要はあるが,カマイルカの生態への理解や飼育下での人工哺乳の基礎データとして重要な意義を有する。

著者関連情報
© 2022 日本酪農科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top