日本海水学会誌
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活性炭による水および食塩溶液中に溶解しているノルマルブタンの吸着
海水の冷凍脱塩に関する研究 (第11報)
大輪 優川崎 成武
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1980 年 33 巻 5 号 p. 261-268

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抄録

二次冷媒にブタソを用いた冷凍法による海水脱塩プロセスにおいて, 淡水ならびに排かん水から溶解しているブタンを除去することを目的として, 6種類の市販水処理用活性炭を用いて, 水および食塩溶液中に溶解したノルマルブタンの20℃ における吸着実験を行なった. また使用した活性炭の吸着性能を明らかにするために, 水溶液中の安息香酸の吸着実験を行ない, そしてノルマルブタンの吸着等温線との相関性を検討した.
安息香酸の吸着は低濃度域で急速な減少を示し, その吸着等温線は高濃度域と低濃度域とで異なった傾斜からなる二つの直線で与えられた. これらの吸着等温線に (2) 式のFreundlich式を適用して, 式中の定数kと1/nとを求めた. 安息香酸の吸着量は活性炭の種類, 形状, 粒径によって異なったが, 定数1/nの値は活性炭の固有の値となり, そして各活性炭において, 高濃度域では1/nH=0.2~0.4の吸着容易の範囲に, 低濃度域では1/nL=1.5~2.7の吸着困難の範囲にあった. ノルマルブタンの吸着は低濃度域における安息香酸の吸着と類似の特性を示し, その吸着等温線は一つの直線で与えられ, 吸着によって溶液中のノルマルブタンの濃度を0.1mmol/lまで減少させることができたが, 各活性炭において, いつれも1/n=1.8~2.8の吸着困難の範囲にあった. また低濃度域における安息香酸の吸着は溶液中の食塩濃度によって影響され, 吸着量の低下を示した. この食塩溶液による吸着量の低下はノルマルブタンの吸着においても認められた
以上の実験結果から, 海水脱塩プロセスにおいて, 淡水および排かん水から溶解しているブタンを活性炭のみによって除去することは有効な方法ではなく, 真空脱気法でブタンを回収した後, 最終的な水処理として活性炭を用いる方法が考えられた.

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