日本海水学会誌
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亜鉛-活性炭系複合吸着剤のウラン吸着性に影響する諸因子の検討
複合吸着剤を用いる海水からウランの採取に関する研究 (第8報)
宮井 良孝北村 孝雄高木 憲夫加藤 俊作宮崎 秀甫
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1978 年 32 巻 3 号 p. 141-149

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抄録

粉末状の亜鉛-活性炭系複合吸着剤について, ウラン吸着性に影響する諸因子と, その影響の度合について検討した. その結果, 複合吸着剤中の亜鉛含有率が最も大きい影響を示し, ついで海水量, 吸着時間の順序に影響は小さくなった. 亜鉛含有率と海水量, 亜鉛含有率と吸着時間との間には交互作用効果が認められ, 各亜鉛含有率に対応して, 海水量と吸着時間にそれぞれ最適値があることが明らかになった. 亜鉛含有率約40%の吸着剤では, 海水量15l, 吸着時間25時間でウラン吸着量は最大値を示した. また海水温度の影響は, 15~35℃ の温度範囲では, 低温ほどウラン吸着量が大きいことを認めた.
次に粉末状で得られる複合吸着剤を造粒体に成形し, 充填カラムによる連続通水試験を行なうため, 粒状吸着剤の調製条件と得られた造粒体の強度およびウラン吸着性などとの関係を検討した. 造粒時のバインダーとしてPVAを用い, 重合度1,700以上のものを粉末吸着剤に対して6%以上加えると, 市販粒状活性炭に匹敵する強度をもった粒状吸着剤が得られることを明らかにした. ウラン吸着性に及ぼすPVAの重合度, 添加量の影響を天然海水を用いて検討した結果, それらの影響は小さいことがわかった. 粒径1~4mmの粒状吸着剤について, ウラン吸着速度に及ぼす粒径の影響を検討した結果, ウラン吸着速度は球体の表面積とほぼ比例的に変化することを認めた. 実用的耐用試験の一種として, 同一の粒状吸着剤について5回の吸着一脱着の反復試験を行なった.その結果, ウラン吸着性の低下は認められず, むしろ反復回数の増加につれて増加する傾向が認められた. ウランの脱着率はほぼ一定で91~93%であった. 1回の吸着-脱着に伴う粒状吸着剤の重量減は約3%であった.

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