日本海水学会誌
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香川県小豆島のアサリRuditapes philippinarumにおけるパーキンサス属原虫の感染状況調査
今城 雅之福嶋 淳加藤 佑亮山下 はづき佐藤 周之
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2019 年 73 巻 4 号 p. 222-228

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抄録

本邦のアサリ漁獲量低迷の原因のひとつに,パーキンサス属原虫,特にPrekinsus olseni感染の全国的な広がりが指摘されている.深刻なアサリ資源枯渇の問題に直面している香川県小豆島から,吉田浜に生息するアサリを対象として,これまで知られていない本原虫の感染状況について調査した. 2016年は9月7日から12月8日まで計5回でアサリ132検体を採取した.9月7日の20検体全てがnested PCR陰性を示した.一方,10月22日の30検体中2検体(6.7 %),11月6日の36検体中10検体(27.8 %),11月20日の32検体中20検体(62.5 %),および12月8日の14検体中13検体(92.9 %)がnested PCR陽性であり,時期によりその割合は大きく異なった.2017年は5月18日から10月25日まで計6回でアサリ176検体を採取した.5月18日の32検体中1検体(3.1 %),6月25日の27検体中3検体(11.1 %),7月13日の31検体中3検体(9.7 %),8月17日の29検体中5検体(17.2 %),9月14日の28検体中1検体(3.6 %),および10月25日の29検体中5検体(17.2 %)がnested PCR陽性であった.また,同陽性検体の中に殻長15 mm以下のものが含まれ,それらの増幅産物のバンド強度の差異から,感染強度の増加傾向が示唆された.2016年と2017年で得られたnested PCR陽性検体の中から30検体をランダムに選別して,得られたITS1-5.8S rRNA-ITS2領域の塩基配列をもとに,一塩基の違いからなる2つの遺伝子型が見つかり,うち一方が30検体中25検体(83.3 %)と優占して検出された.さらに,同領域の分子系統解析により,両タイプはともにP. olseni/atlanticusのクレード内に位置し,P. olseniと同定された. 以上より,小豆島のアサリがP. olseniに感染していること,かつ産卵終期の11月と12月での感染率が高いことを初めて明らかにした.

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