北日本病害虫研究会報
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出穂後の積算気温と穂いもち感受性の関係
小林 隆笹原 剛志神田 英司兼松 誠司石黒 潔菅野 洋光
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2009 年 2009 巻 60 号 p. 12-15

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抄録

東北地方では,冷害年に障害不稔とともに穂いもちによる減収が大きな問題となっている.冷害年に穂いもちが多発する要因の一つとして,出穂後の低温による穂いもち感染可能期間の長期化が考えられる.そこで,出穂後の気温と穂いもち感受性の関係を調査し,日平均気温の積算気温を用いて,各穂の穂いもち感染可能期間の範囲を明らかにした.出穂後の日平均気温の積算気温0-200℃日および50-300℃日の穂にいもち病菌が感染して,罹病籾率5%以上の籾・枝梗いもちおよび穂首いもちがそれぞれ発生する.穂いもちの感染危険期を出穂後の積算気温300℃日以内と見なすことで,イネ株内の感染危険期と感染可能穂率の関係を予測できる.株内の感染可能穂率が50%以上の期間は,出穂期間中の平均気温が18.7℃のときは18 日間だが,26.8℃のときは11 日間であった.イネいもち病は東北地方において最も重要なイネ病害であり,やませが吹き込む太平洋側の各県では特に冷害年に穂いもちが多発して大きな減収をもたらす.イネは低温に遭遇するといもち病菌に対する感受性が高まるため,いもち病の感染リスクが高まることが明らかとなっている(2-4).また,出穂後の低温によりイネの穂いもち感染可能期間が長期化することが,冷害時に穂いもちが多発する一因と考えられる.一方,穂いもちの発生が予想されるときは出穂後に追加の茎葉散布剤を散布する場合があるが,茎葉散布剤の散布晩限と出穂後の気温との関係は明らかとなっていないため,実際には効果の低い時期に茎葉散布剤を散布している可能性がある.そこで,本報告では,出穂後の気温と穂いもち感受性の関係について検討した.

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© 2009 北日本病害虫研究会
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