日本写真学会誌
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ゾル・ゲル法による酸化タングステン薄膜のフォトクロミズムII
羽生 禎侍西出 利一平井 亮森島 毅
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1998 年 61 巻 5 号 p. 288-295

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抄録

前報において, アモルファス酸化タングステン薄膜にPVAを積層することにより, そのフォトクロミズム (PC) の効率が高められたことを報告した。
本報においては, その他の水溶性ポリマー, すなわち, ポリアクリル酸 (PAA), ポリエチレングリコール (PEG), ポリビニルピロリドン (PVP) それぞれについて積層効果を調べた結果, いずれもPCの効率が高められたことを認めた。中でもPVPは際だったPC増強性を示した。
さらに, PVPがタングステン酸水溶液と自由に直接混合できることを見出した。これから作成した酸化タングステン薄膜は優れたPC性を示し, 発色, 消色の繰り返しに対しても安定な特性を示した。酸化タングステン薄膜のPCに対してPVPの適切な添加量が見出された。
ついで我々はPVPの側鎖である2-ピロリドンに注目した。2-ピロリドンを直接タングステン酸水溶液に添加混合して得られた薄膜はPVPの場合と同様な振る舞いを示した。すなわち, 酸化タングステンのモル数に対し2-ピロリドンの添加モル数を増加すると, モル比0.3まではPC効率は向上するが, それ以上に増やすと低下した。AFMによる表面観察により, アモルファス酸化タングステンの粒子サイズは2-ピロリドンの添加によって制御されることが分かった。すなわち, 2-ピロリドンのモル比が増加すると粒子サイズは小となった。FT-IRの測定により酸化タングステンは2-ピロリドンと水素結合によってつながっていることが分かった。Fig.13に2-ピロリドンを含んだ酸化タングステンの発色機構を提案した。

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