耳鼻咽喉科展望
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小脳橋角部病変の神経耳科的検査所見
浅井 美洋安原 秋夫峯田 周幸関 敦郎
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1998 年 41 巻 2 号 p. 146-150

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抄録

小脳橋角部占拠性病変80例 (聴神経腫瘍65例, 髄膜腫8例, クモ膜嚢胞2例, 類上皮腫2例, 脂肪腫1例, 三叉神経鞘腫1例, 不明1例) に対する機能検査の異常検出率について検討した。聴覚症状を主訴とした群 (56例) では自記オージオ22%, 語音聴検11%, SR 64%, ABR 86%, ENG 37%, 温度眼振検査76%であり, めまい・ふらつきを主訴とした群 (17例) では神経学的診察と並びに眼振検査で18%, 温度刺激検査60%, ENG 33%, SR 63%, ABR 75%であった。めまいの性状別に分けると平衡機能検査 (温度刺激検査とENG) および他覚的聴覚検査 (SRとABR) とも非回転性めまい群ではそれぞれ86%, 100%の異常検出率を示したが, 回転性めまい群では56%, 60%に留まっていた。以上のことから小脳橋角部病変例の2割前後が従来の神経耳科的機能検査だけでは偽陰性になる可能性が示された。初期診療時に明確な診断に至らない例や経過中改善傾向に乏しい例には積極的に頭部MRIを施行し, 一度は中枢病変の除外診断を行った方が良いと考えた。

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