2018 年 61 巻 2 号 p. 97-100
今回われわれは喉頭蓋に血腫を伴い, 重症化する危険性のあった急性喉頭蓋炎の1症例を経験したので報告する。 51歳男性。 前日からの咽喉頭違和感と嚥下困難感があり, 当院耳鼻咽喉科を受診した。 当院の心臓外科にて大動脈弁狭窄症に対し人工弁置換を行った既往があり, ワルファリンカリウム 5mg 及びアスピリン 100mg を内服していた。 内視鏡検査では喉頭蓋舌根面の著明な腫脹を認め,喉頭蓋に血腫を伴っていた。 凝固能の精査のため同日 PT-INR を測定したところ, 12以上と異常高値であったため心臓外科に相談した。 緊急でメナテトレノンを計 60mg 静注したところ, 翌日には PT-INR は1.4と正常化した。 その後抗生剤, ステロイドの点滴を連日行い保存的に経過観察したところ徐々に軽快し退院となった。 抗凝固薬を内服している症例が急性喉頭蓋炎を発症した場合, 血腫を伴い重症化する危険性があるため注意が必要である。 また気管切開も出血コントロールが困難であるため, 主科とよく相談しながら治療方針を慎重に検討していく必要がある。