産婦人科の進歩
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症例報告
当科にて治療を行った外陰部多発粉瘤の1例
笹ケ迫 奈々代山口 綾香矢内 晶太亀井 沙織山田 康子中峯 寛和江川 形平藤田 浩平
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2018 年 70 巻 3 号 p. 291-295

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抄録

類表皮嚢腫,いわゆる粉瘤とは,真皮~皮下に生じる古い角質を含有した嚢胞である.扁平上皮が存在する部位であればどこにでも発生しうるが,顔面,頸部,背部,臀部などが好発部位で単発のことが多く,女性の外陰部に多発することは稀である.今回われわれは外陰部多発粉瘤の1例を経験したので報告する.症例は62歳,4妊2産であり,10年前に外陰部に腫瘤を認め,内容物の圧出で軽快していた.1年前より外陰部多発腫瘤による違和感を認め,徐々に増大したため近医皮膚科を受診し,粉瘤を疑われた.当院産婦人科での治療を希望して紹介受診した.診察時,両側大陰唇に多発する皮下結節を認め,感染徴候は認めず,粉瘤の疑いで外科的切除を施行した.術後の病理組織診断はmultiple epidermoid cysts(多発粉瘤)であった.嚢胞壁の扁平上皮にコイロサイトーシス様の空胞化を認めたが,免疫組織染色やPCRではHPVは検出されなかった.術後半年間明らかな再発なく経過している.粉瘤の治療では嚢胞壁を残さず切除することが重要で,嚢胞壁が残った場合は再発しやすい.また,頻度は低いが,粉瘤から発生した悪性腫瘍の報告がある.多発粉瘤では,全ての嚢胞の切除は困難で再発のリスクが高く,今後も経過観察が必要と考えられた.[産婦の進歩70(3):291-295,2018(平成30年8月)]

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© 2018 近畿産科婦人科学会
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