産婦人科の進歩
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症例報告
子宮留膿症からの子宮穿孔により急性汎発性腹膜炎を発症した子宮頸癌の1例
梅田 杏奈串本 卓哉福井 薫小野 良子数見 久美子宮西 加寿也朴 康誠山本 敏也
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2013 年 65 巻 1 号 p. 83-89

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抄録

子宮穿孔は比較的まれな疾患である.原因の多くは妊娠中や子宮に関する手術後,子宮留膿症などの良性疾患であり,子宮頸癌を合併した症例の報告はこれまでに6例のみである.今回われわれは,子宮留膿症からの子宮穿孔により急性汎発性腹膜炎を発症した子宮頸癌の症例を経験したので報告する.症例は41歳,未経妊.数カ月前より不正性器出血を自覚していた.徐々に下腹部痛が出現,発熱を認めたため近医内科受診し,補液,解熱剤投与を受けるも症状軽快せず,2日後に近医産婦人科を受診し,当院紹介受診となった.悪臭を伴う血性分泌物を認め,子宮頸部に腫瘤性病変を認めた.腹膜刺激症状あり,CRP 24.1mg/dlと炎症所見高度にて急性腹膜炎,子宮頸癌疑いで緊急入院となった.抗生剤投与を行うも炎症所見改善なく,MRIにて子宮穿孔を認めたため入院3日目に緊急開腹手術となった.腹腔内に膿の貯留を認め,子宮後壁には径2mm大の穿孔を認めた.腹腔内洗浄およびドレナージ術,準広汎子宮全摘術,両側付属器摘出術を施行,右外腸骨リンパ節の腫大を認めたためこれも摘出した.術後病理診断は子宮頸部粘液性腺癌内頸部型,穿孔部分に癌細胞の浸潤は認めなかったが,右外腸骨リンパ節には微小転移を認めた.術後診断は子宮頸部腺癌IB1期とした.術後炎症所見の改善を認めず,CTにて網嚢孔に膿瘍形成を認めたため,再開腹のうえ腹腔内洗浄およびドレナージ術を施行し,術後抗生剤投与により徐々に改善認めるも,炎症所見の陰性化まで2カ月を要した.その後,子宮頸癌に対して術後補助療法として化学療法を施行,現在も治療中である.〔産婦の進歩65(1): 83-89,2013(平成25年2月)〕

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© 2013 近畿産科婦人科学会
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