産婦人科の進歩
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症例報告
子宮頸部腺癌IVa期に対して術前化学療法後に前方または後方骨盤除臓術を施行し長期生存を得た2例
池田 ゆうき鍔本 浩志井上 佳代加藤 徹金澤 理一郎小森 慎二前田 弘彰廣田 省三
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2011 年 63 巻 4 号 p. 493-498

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抄録

子宮頸部腺癌(腺扁平上皮癌を含む)は扁平上皮癌に比して放射線感受性が低く進行癌では予後が悪い.一方,側方浸潤のないIVa期であれば骨盤除臓術により完全摘出が可能である.当科では1998年~2006年の間,子宮頸部腺癌に対する術前化学療法(NAC: paclitaxel 60mg/m2静脈投与 d1, d8, d15+cisplatin 70mg/m2経子宮動脈投与およびゼラチンスポンジによる塞栓術 d2,q21d×3サイクル)の臨床試験を実施した.IVa期2例が登録され,NAC後に前方または後方骨盤除臓術を施行することで長期生存を得たので報告する.[症例1]66歳,経産婦.パーキンソン病合併.性器出血のため来院し頸部組織生検,MRI検査,注腸検査にて長径8cmの子宮頸部腺癌IVa期と診断された.NAC 2サイクル後に腟内に便を認め直腸腟瘻と診断した.またMRI検査では腫瘍は消失した(CR).広汎子宮全摘術および直腸低位前方切除術を施行したところ摘出標本に病理学的残存腫瘍を認めず,術後84ヵ月を経て再発所見はなく,排便障害もない.[症例2]59歳,経産婦.血尿のため近医泌尿器科を受診し子宮頸部腺癌膀胱浸潤と診断され当科に紹介された.NAC3コース後施行した膀胱鏡検査では明らかな腫瘍を認めず,MRI検査ではPRであった.広汎子宮全摘術および膀胱摘出術を施行し,術後72ヵ月経過し再発所見はない.〔産婦の進歩63(4):493-498,2011(平成23年11月)〕

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© 2011 近畿産科婦人科学会
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