産婦人科の進歩
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原著
卵胞液内Insulin-like growth factor (IGF) ならびにIGF binding proteinsによる卵の成熟および受精後の胚発育の評価
横田 光山辺 晋吾船越 徹丸尾 猛
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2001 年 53 巻 2 号 p. 92-98

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抄録

Insulin-like growth factor (IGF)は卵胞発育に必須の因子である. このIGF作用を修飾するIGF binding protein (IGFBP)はIGFBP-1が発育卵胞に, IGFBP-2, -4は閉鎖卵胞に発現することが報告されている. そこでIGF-IGFBP系の卵の成熟と受精後の胚発育における役割を検討する目的で, 体外受精の採卵時に患者の承諾を得て卵胞液を採取し, 卵胞液中のestradiol (E2), testosterone (T), total IGF-I, free IGF-I濃度を測定した. また, 125I-IGF-IIを用いたWestern ligand blotにより, 卵胞液中と血漿中のIGFBPプロファイリングを行い, バイオイメージングアナライザーを用いて定量化した. 本研究では, 得られた卵胞液が含んでいた卵の成熟度により卵胞は成熟(M)群と未成熟(IM)群に分け, また受精後の胚発育程度により胚発育良好(HP)群と胚発育不良(LP)群に分けて, 卵胞液中のホルモン濃度, IGFBP組成を各群間で比較検討した. 卵胞液中E2, T濃度は, M群とIM群の間, HP群とLP群の間で有意の差がなかった. 卵胞液中total IGF-I濃度はIM群に比較してM群で高く, またHP群でLP群に比較して高値を示した. 卵胞液中free IGF-I濃度はM群でIM群に比較して高値を示したが, HP群とLP群の間には有意の差を示さず, むしろHP群で低値を示す傾向にあった. 卵胞液中IGFBP-2, -3, -4はIM群に比較してM群で有意に高値を示した. また, 卵胞液中IGFBP-1, -2, -4はHP群でLP群に比較して明らかに高値であった. 卵胞液中IGFBP-2はどの群の卵胞においても血漿レベルより高値を示した. これらの成績より, 成熟卵を含む卵胞や胚発育が良好である卵を含む卵胞ではtotal IGF-I濃度, IGFBP濃度が未成熟卵を含む卵胞や受精後の胚発育が不良な卵を含む卵胞での値に比較して高く, IGF-IGFBP系は卵の成熟と, 受精能獲得に重要な役割をもつことが示唆された. また, IGFBP-2は血漿レベルより卵胞液中レベルが高く, 排卵直前には卵胞局所で産生されていることが推測される.

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© 2001 近畿産科婦人科学会
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