本稿では,オニオン相と呼ばれる界面活性剤の高次構造を伴う状態に関する,最近の著者らによる大規模粗視化分子シミュレーションの紹介を行う.剪断流下で多層ベシクル状態が形成される実験が1990 年前後に提出されて以来,この問題は典型的なソフトマターの動的構造形成の問題として知られるようになったが,その起源と物理機構は知られていない.我々はモデルの粗視化と計算規模の拡大,という2つをかけあわせた手法を用いることによりこの問題の解明に向けて取り組んでいる.本稿では研究内容についての簡潔な紹介に加えて,シミュレーション手法も記述する.