言語研究
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論文
「指定文」および関連する構文の構造と派生
西垣内 泰介
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2016 年 150 巻 p. 137-171

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抄録

この論文では,日本語の「指定文」および「カキ料理構文」と呼ばれている構文について,特定の構造を持つ名詞句を中核として,その構造と派生を示す。本論文の分析では「中核名詞句」は2つの項をとり,外項が主要部名詞の意味範囲を限定(delimit)し,内項がその意味内容を「過不足なく指定する」(exhaustively specify)という関係を持つ。「中核名詞句」の内項が焦点化されることで「指定文」が,その指定部を占める外項が主題化されることで「カキ料理構文」が派生される。焦点化された要素が変項を含む構成素の意味を「過不足なく指定する」という関係が「指定文」の根幹をなすものだが,これは疑問文とその答えの間に求められる関係に由来するものである。「中核名詞句」の内部での項のc統御関係が,対応する「指定文」に「連結性」によって反映され,「自分」の逆行束縛と見える現象などが説明されるる。「XをYに…する」という付帯状況を表す副詞節も「中核名詞句」から派生する分析を提案している。

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© 日本言語学会, 著者
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