杏林医学会雑誌
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第9回市民公開フォーラム「消化器がん医療の再前線」
当院での大腸癌治療に関して ─早く見つけて,しっかり治そう!─
吉敷 智和麻生 喜祥飯岡 愛子若松 喬本多 五奉片岡 功金 翔哲磯部 聡史代田 利弥深澤 智將阪本 良弘阿部 展次須並 英二
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2023 年 54 巻 4 号 p. 205-207

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抄録

大腸癌の罹患率・死亡率はともに増加傾向にある。一方で,早期の段階で治療介入すれば,高い確率で治癒が望める疾患であるため,早期発見・治療が重要である。早期の大腸癌は,消化管内視鏡による治療で根治を目指すことができる。内視鏡治療で根治が得られない場合には,外科的手術が必要である。近年は,開腹手術から腹腔鏡手術,ロボット支援手術などの低侵襲手術に移行してきている。肛門に近接した腫瘍に対しても,自動縫合器を用いた吻合法が発達し,安全に肛門を温存できるようになってきた。また当院では,進行下部直腸癌に対して術前化学放射線療法を導入し,約20%の症例で臨床的な完全奏功と診断し,切除をせず経過観察している。術前化学放射線療法が著効し,病理学的完全奏効となった症例では,切除を回避し,人工肛門,排便・排尿・性機能障害などの後遺症やその他の合併症を回避できる。このような集学的治療法は究極の直腸癌治療と考えている。
大腸癌は,早期発見・治療によって完治できる可能性のある悪性腫瘍である。当院では,大腸癌患者の病期を考慮し機能温存を含めた最適な治療法を追求する方針である。

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