杏林医学会雑誌
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粟粒結核の最近における病像の変化 : 診断困難な 3 症例の報告と文献的考察
松本 真一村川 章一郎岡本 新悟
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1973 年 4 巻 4 号 p. 245-254

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抄録

ここ20年の間に, 粟粒結核の病像は著しく変貌した。発病年齢が高齢化し, そのピークが60歳を超えるようになつた。ツ反応が50歳過ぎから低下してゆくという成績から, 老人の粟粒結核の増加は, 免疫低下による陳旧性病巣の再燃に起因する可能性が強く, しばしば特徴的な臨床像や検査所見を欠く。このような場合, 臨床診断は決して容易でない。われわれは, 生前診断のつかなかつた3例を経験した。2例は胸部X線上に粟粒陰影をもたず, ツ反応陰性で, 皮膚発疹と急性腎不全及び肝傷害を主徴とし, 他の1例は多発性筋炎のステロイド治療中に発症し, 症状が修飾された例である。3例共, 病理組織上, 血管炎の所見がかなり著明であつた。本論文ではこの3例を報告するとともに, 最近における病像の変遷と診断について, 文献を考察しながら検討を加えた。

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© 1973 杏林医学会
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