杏林医学会雑誌
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妊娠後期ラット羊水中グルタミン酸投与における胎仔及び出生ラット腎臓近位尿細管のalkaline phosphatase活性変化についての酵素組織化学的研究
高篠 智中田 梨香野崎 聡水間 広西村 伸大小橋 隆一郎
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2001 年 32 巻 1 号 p. 27-34

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抄録

グルタミン酸は神経伝達物質であるとともに,神経細胞障害性がある事で知られているアミノ酸である。今回著者らは,胎生期における高グルタミン酸状態が胎仔腎臓に及ぼす影響について検討した。妊娠後期ラット羊水中にグルタミン酸(sodium hydrogen L (+)-glutamate monohydrate, MSG)を投与し,胎仔期及び出生後の各発達段階での胎仔の腎機能変化を検索するため,その指標として近位尿細管におけるalkaline phosphatase (ALPase)活性変化を酵素組織化学的方法により検出した。その結果, (1)胎生15日齢MSG投与直後と投与2日後(胎生17日齢)における胎仔の腎臓は無処置群, saline投与群及びMSG投与群の全てにおいて尿細管でのALPase活性は極めて弱く,分布は腎臓皮質内帯の髄傍部の一部に限局しており,各群間に差は認められなかった。(2)投与5日後(胎生20日齢)において無処置群, saline群ではALPase活性は腎臓皮質内帯に陽性を示したが, MSG投与群ではALPase活性が著しく弱く,分布も一部に限局していた。(3)投与34日後(出生28日齢)では, ALPase活性は腎臓皮質全体に陽性を示し, 3群において差は認められなかった。これらの事から,一過性の羊水中の高グルタミン酸が,腎臓の近位尿細管上皮細胞に何らかの影響を及ぼした結果, ALPase活性の低下,即ち,胎仔腎機能の低下を投与5日後(胎生20日齢)の胎仔において,誘発させた事が考えられた。また,出生28日齢ではすでにその影響が改善されている事が明らかになった。以上の結果から,胎生期における高グルタミン酸摂取が,胎仔腎臓の近位尿細管機能障害を起こす事が示唆された。また,腎臓発生における腎毒素の影響の研究において, ALPase酵素組織化学的方法が有用であることが考えられた。

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