1998 年 29 巻 3 号 p. 293-305
胃がん死亡率の地域差が各種栄養素摂取量の地域差によりどの程度説明できるのかを検討することを目的として,1989年から1991年の冬季にわが国の5つの地域において男性住民207名とその配偶者165名に対し,3日間の秤量記録食事調査を行うとともに地域別に栄養素の平均1日摂取量を計算し,胃がんの年齢調整死亡率との地域間相関関係を求めた。この結果,性で調整した偏順位相関係数については,検討を行った16種の栄養素の中でビタミンB_1,ナトリウム,カロテン,カルシウム,レチノールが大きい値を示した(それぞれr=0.6293,0.5354,-0.8926,-0.5775,-0.4542)。この中でナトリウム摂取量についてはとくに,摂取量の地域内変動量に対する地域間変動量の比が大きいところから胃がん死亡率との間のこの正の関係をとくに高い信頼性をもって指摘できるものと評価された。