杏林医学会雑誌
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慢性血液透析を導入した糖尿病性腎症の臨床的検討
辻 正人逢田 茂下村 文彦小山 年勇吉田 雅治北本 清長沢 俊彦
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1985 年 16 巻 4 号 p. 481-486

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抄録

慢性血液透析を導入した成人発症型糖尿病性腎症26例についてretrospectiveに臨床的検討を試みた。腎不全の自然経過を血清クレアチニン値の逆数を用いて検索した結果, 糖尿病性腎症は他の原因による慢性腎不全に比べてその進行が早かった。透析導入時の高血圧の合併は88.4%と高率に認め, 心不全は26.9%に合併していた。糖尿病の診断から透析導入までの平均期間は13.2年, 高血圧は透析導入前約10年で出現し, 網膜症は導入前約5年で出現していた。腎症の合併としては, 高血圧の出現後約4年で蛋白尿が出現し, 蛋白尿の出現後約3年でネフローゼ症候群を呈し, その後3年以内に透析導入となっていた。糖尿病性腎症の慢性血液透析導入に至るrisk factorsは, 心肥大, 冠動脈硬化症, 高血圧症の3つが考えられ, これらが心機能の低下を招き, 低蛋白血症, 体内水分貯留が相まって腎不全進行を一層早めるものと考えられた。

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© 1985 杏林医学会
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