【目的】近年、安全志向の高まりや環境に対する配慮から地産地消が推奨され、在来野菜も見直されている。滋賀県に伝わる在来カブには様々な色や形、味の特徴がある。本研究では、滋賀県在来カブの中で特に辛味が強い山カブと知名度の高い日野菜に含まれるイソチオシアネート(ITC)類の調理加工中の変化を調べた。
【方法】滋賀大学教育学部農場で露地栽培したカブの根部を試料とした。厚さ2mmのいちょう切りにし、4%食塩とともに即席漬物器中で1時間室温放置し、これを絞って塩漬けカブとした。さらに塩漬けカブを甘酢とともに即席漬物器中で一定時間室温放置し、甘酢漬けカブとした。各カブの搾汁液からクロロホルムによってITC類を抽出し、オクタデカンを内部標準としてGCにより定量した。ピークの同定にはGCMSを用いた。
【結果と考察】生の山カブと日野菜からは、3-ブテニルITC(B-ITC)と2-フェニルエチルITC(P-ITC)が検出された。いずれのITC含量とも個体差が大きかったが、破砕後は減少した。塩漬けにより、いずれのITC類含量とも減少した。甘酢漬けカブ中のP-ITC含量は、甘酢漬け時間が長くなるほど減少し、3日目以降は微量以下になった。B-ITC含量は甘酢漬け1日後まで増加した後、徐々に減少した。これらの変化は、辛味などの嗜好に影響すると考えられる。