日本家政学会誌
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リビングダイニングの住生活における収納の問題
中村 久美今井 範子
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2002 年 53 巻 1 号 p. 43-56

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抄録

LDにおける生活と対応するモノの収納状況を明らかにしたうえで, 住生活における収納の問題を指摘し, 収納空間のあり方を考察した.以下に要約する.
(1) LDでは, 食事やだんらん以外に「情報・通信・事務」「衣類・管理」「仕事」「趣味」「更衣・装身」「健康」の諸生活に加え, 「子供の勉強」「接客」など, 家族の多様な生活が展開され, それに対応して多岐にわたるモノが収納される.とりわけ書類や書籍, ディスク・テープ類など, “情報に関するモノ” が多い.家族の生活の拠点であるがゆえにLDに集中する “情報” の収納, 管理は, LDに求められる重要な機能である.
(2) 文具・事務用品, 書籍, 書類, 携帯品を中心に, 収容されず出したまま置いているモノや, 収納場所が不定のモノが少なくない.そのような収納状況に対して, ほとんどの世帯でモノの散らかりを指摘している.特に新聞, 雑誌は過半数の世帯が散らかるとしている.
(3) 収納に関わる生活スタイルには, すっきり片付けておきたいタイプI, 多くのモノをきっちり管理するモノとの関わりが深いタイプII, 整理に消極的なタイプIII, モノを置き並べることに価値をおくタイプIVが存在する.
(4) 4割の世帯が収納量の不足を指摘し, 6.5割の世帯で収納に困るモノがあるとしている.散らかりの中心である新聞, 雑誌を含めた書籍については, 家族がLDに持ち寄る状況や, それらの増加, 多様化に対応しうる収納スペースとしては確保されていない状況である.
(5) 収納量が足りているとする世帯でも, その64%は収納に困るものがあり, さらに40%の世帯が “あり場所がわからないことがある” としている.収納の問題は単にスペースの容量の不足によるものではない.問題の指摘が多いのは, “情報に関するモノ” のうちの情報書類やテープ, ディスク類などである.これらのモノやこまごまとした諸品の収納は, 単に “しまう” のではなく, 所定の収納方式による整理, 収納を要する.
(6) 生活スタイルにより, 一定の収納方式によらず, 適当に収納する住み方がされる場合がある.そのような世帯も含め, 出納が容易で分類, 整理に合理的な収納方式として, 引出しの有効性が指摘できる.
(7) LDの収納空間は, LD内に, 空間計画の段階で居住スペースとは切り離して優先して確保される必要がある.その空間は新聞, 雑誌や他の書籍に対応する戸棚形式のボリュームのあるスペースと, 書類やディスク, テープ形式の “情報に関するモノ” とこまごました身近な諸品の分類, 収納のための引出しで構成される, 多様な空間として計画される必要がある.
(8) 以上の収納空間のあり方は, 収納に関わる生活スタイルにおけるタイプIIIの住み方に対応しうるものである.主として日々流入する “情報” の整理, 管理に対応するLDの収納空間は, このようにことさら整理, 片付けに労力をかけない住み方に対応しうるものであることが重要である.

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