日本家政学会誌
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わたの燃焼挙動に関する研究 (第1報)
タバコ火からの熱の伝播挙動について
中西 茂子大河内 文子
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キーワード: わた, 熱伝播, 燃焼, 蓄熱, 減量, くん焼
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1990 年 41 巻 12 号 p. 1179-1185

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抄録

火災の主要因の一つがタバコ火であることから, 繊維集合体中におけるタバコ火からの熱の伝播, 燃焼挙動を種々の条件下で検討して次のような結果を得た.
(1) タバコ火からの熱は横方向に最も速く, 下方向に最も遅く伝播する.
(2) 伝播時の最高温度は, わたを空気中に露出している場合のほうが被覆した状態より高く, とくに上方向が高い.しかし, 蓄熱量は被覆したほうが大きく, とくに上方向が大きい.被覆なしの場合の蓄熱量は下方向の放熱が少ないため最大となる.
(3) わたの厚さの影響は, 厚くなると最高温度も蓄熱量も全体的に上昇するが, 最高温度は充てん密度が高くなると横ばい状態になる.厚さが4cm以上になると下方向伝播の温度は抑制されて, かえって低下の傾向を示す.しかし横方向は増加する.
(4) わたの水分率の影響は, 充てん密度の低い場合は熱の伝播により水分が蒸発するため, 温度にも蓄熱量にもあまり影響がみられない.
(5) 燃焼消失率は充てん密度が低いほど, 厚さが薄いほど, 水分率が高いほど低い傾向が認められたが, 充てん密度が0.06g/cm3以上になるとほとんど差がなくなり, 90~100%近くの燃焼率を示すようになる.
(6) PET混綿の影響は, 混用率が高くなるにつれて最高温度も蓄熱量も全充てん密度領域にわたって低下する.燃焼率もPET混綿により低下し, とくに充てん密度の低いほど低下も大きい.

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