日本家政学会誌
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マアジ干物のテクスチャーにおよぼす振り塩法と立て塩法の影響
下坂 智恵石田 優子下村 道子
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1990 年 41 巻 12 号 p. 1159-1167

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抄録

マアジの片身肉を用い, 振り塩法と立て塩法によって干物を調製し, これら製造方法の異なる2種の干物のテクスチャーに違いがあるかどうか, それが好みにどう影響しているかを探ろうとして実験を行い, 以下の結果を得た.
(1) 振り塩干物は, 塩漬処理中に水分の浸出による重量の減少があり, 乾燥処理においても水分減少率が大きかった.また, 立て塩 (干物では, 魚肉を15%食塩水に浸漬すると重量が増加し, 水分はわずかに減少していたが, 乾燥には長時間を要した.
(2) 干物の硬さに, 振り塩干物では塩漬時間と乾燥時間が影響し, 立て塩干物では乾燥時間が影響していた.
(3) 水分と食塩濃度がほぼ同じ立て塩法と振り塩法の2種の干物を用いて, テクスチャーの違いと嗜好との関係を官能検査によって調べると, 振り塩干物のほうが硬く, 総合的に好まれた.これら2種 (のテクスチュロメーターカーブを比較すると形が異なっており, テクスチャーの特徴が異なっていることが示された.振り塩干物は立て塩干物よりも硬さは硬く, もろさがあった.立て塩干物の乾燥時間を長くすると, 嗜好性が向上した.干物の嗜好性は, 硬さによるところが大きいといえる.
(4) 肉の砕けやすさ度は, 振り塩干物のほうが立て塩干物よりも高く, 振り塩干物は砕けやすいことが示された.
(5) 干物の表面の組織を顕微鏡で観察すると, 振り塩干物では表面近くの筋繊維が縮小して密になっており, 立て塩干物の筋繊維は膨潤して互いに密着していた.
(6) 調製後保存0日の干物と保存3日間の干物を官能検査により比較したところ, 3日後のほうが硬く, 総合的にも好まれた.アミノ酸の増加は3日間の保存ではほとんどみられず, 硬さが上昇しており, この硬さの上昇が嗜好性を向上させたと考えられた.

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