日本家政学会誌
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多重バイト試験法によるジャガイモでん粉のりの物性の検討
辻 昭二郎中谷 文子
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1990 年 41 巻 12 号 p. 1137-1142

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抄録

他のでん粉と比べて比較的低濃度でもゲル構造が形成され, 加熱条件と添加物に対して敏感なジャガイモでん粉のりの, 物性とのり化特性を多重バイト試験法で検討解析した。また, コーンプレート型の粘度計によるみかけの粘度の値とも一部比較した.
(1) コーンプレート型粘度計は, ジャガイモでん粉の場合, 比較的低濃度ではみかけの粘度測定がスムースにできるが, 濃度が3.5%以上になると十分な対応ができないことが示された.これに対し, 多重バイト試験法によるみかけの粘度と関連するパラメーター (-Aav) はでん粉濃度4.3%の場合も精度よく測定できることが示された.
(2) ジャガイモでん粉のりはきわめてのり化しやすく, 加熱時間40分の場合, 加熱温度70℃以上ではブレークダウンによりみかけの粘度が低下することが, 多重バイト試験法のパラメーターで示された.
(3) 添加物として食塩を加えると, ジャガイモでん粉のりののり化とゲル化が抑制され, 加熱温度の上昇につれ無添加の場合のようにみかけの粘度は低下せず逆に上昇し, 加熱温度90℃でわずかに低下した.
(4) 添加物として0.1%パルミチン酸ナトリウムを加えると, ジャガイモでん粉ののり化とゲル化が抑制され, 温度の上昇につれのりのみかけの粘度は上昇したが, とくに高温の90℃における上昇が大であった.これは, パルミチン酸ナトリウムはとくに高温の条件で, でん粉のりのゲル形成に寄与しているためと考えられる.
(5) これらのジャガイモでん粉のりの温度条件や添加物による物性変化を, のりのみかけの粘性のみでなく, のりのみかけの弾性要素とも関連するパラメーター (たとえば粘着性) の変化でも検討した.その結果, パルミチン酸ナトリウム添加の高温の条件におけるのりの物性変化がより明瞭に示された.
(6) 添加物の影響は, でん粉のりののり化特性と大きな関連をもっていることを, パルミチン酸ナトリウム添加の場合について, 加熱条件を変えたジャガイモでん粉のり, およびのり化特性が大きく変化した湿熱処理ジャガイモでん粉ののりなどについて示した.
本報の一部は昭和63年度日本家政学会第40回大会および平成元年度第41回大会で口演発表した.

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