日本家政学会誌
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スラックスの構成要素が動作適応性に与える影響
-腹部および腰部の衣服圧による検討-
古山 裕子太田 壽江高橋 知子高橋 春子
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1989 年 40 巻 6 号 p. 511-519

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抄録

立体裁断によるパターンを基本型として, 後股上線の傾斜度と後股ぐり幅を変化させたスラックス6種, (1) 基本型, (2) 後股ぐり幅-2cm, (3) 後股ぐり幅+2cm, (4) 傾斜度10°, (5) 傾斜度20°-I (20°傾斜のみ), (6) 傾斜度20°-II (20°傾斜して後股ぐり幅を狭くしたタイプ) を作製した.これらのスラックスについて腹部および腰部の衣服圧を計測し, 後股上線の傾斜度と後股ぐり幅が動作適応性におよぼす影響を検討し, 次のような結果を得た.
1) 椅座位姿勢において後股ぐり幅を増加させた場合, 前面では腸稜点から腸棘点のあたりと下腹部, 後面では体側部から殿部にかけて衣服圧が低下し, 後股上線を傾斜させた場合は前面・後面全体に低下する.
2) 分散分析の結果, 衣服圧への影響は, 腹部・体側部ともに計測姿勢, スラックスの種類の影響が大きく, 個人の影響は小さい.しかし, 腹部は体側部よりもスラックスの種類による影響が大きい.
3) 椅座位姿勢において (3) 後股ぐり幅+2cmは基本型の約60%に衣服圧が低下し, (4) 傾斜度10°は約35%, (5) 20°-Iおよび (6) 20°-IIは約25%に低下する.これより後股上線を10°および20°傾斜した場合は, 後股ぐり幅を2cm広くした場合の約2倍の衣服圧を低下させる効果がある.
4) 後股上線を傾斜させた場合, 後股ぐり福を広くすることは衣服圧を低下させるとは限らず, 細身のスラックスのパターンは後股上線を20°傾斜して後股ぐり幅を狭くすればよいと考えられる.

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